システムアーキテクト試験は、IT業界で働くエンジニアにとって、自身のスキルと知識を証明するための重要な国家資格です。近年、情報システムの複雑化が進むにつれて、システムアーキテクトの需要はますます高まっており、多くのエンジニアがキャリアアップを目指してこの試験に挑戦しています。
この記事では、システムアーキテクト試験の概要、難易度、試験内容、受験資格、おすすめの書籍などを詳しく解説し、試験合格を目指す方々をサポートします。
システムアーキテクト試験とは
システムアーキテクト試験とは、情報処理推進機構(IPA)が実施する国家資格試験の一つです。情報システムの設計や構築に関する高度な知識とスキルを評価し、システム開発の上流工程を担うことができる人材を育成することを目的としています。
具体的には、システムアーキテクトは、顧客の要望をヒアリングし、要件定義、システム設計、開発、テスト、運用・保守まで、システム開発の全工程を主導する役割を担います。システムアーキテクト試験は、ITスキル標準(ITSS)キャリアフレームワークのレベル4に相当し、「プロフェッショナルとしてスキルの専門分野を確立し、自らのスキルを活用することによって、独力で業務上の課題の発見と解決をリードするレベル」と定義されています。
そのため、システムアーキテクトには、情報技術に関する専門知識だけでなく、コミュニケーション能力、問題解決能力、リーダーシップなど、幅広いスキルが求められます。主な受験者層は、システム開発の上流工程を導く立場にある人、もしくは目指している人で、豊富な業務知識にもとづいて的確にシステム化の対象業務を分析し、顧客のニーズに適したシステムのグランドデザイン設計から完成までを主導する上級エンジニアを目指す方とされています。
システムアーキテクトは、特定のポジションが決まっているわけではなく、システム開発の上流工程を主導する立場であるプロジェクトリーダーやチームリーダーなどのポジション、ユーザー企業内のIT部門におけるリーダーポジションなど、様々な立場で活躍が期待されます。
システムアーキテクト試験の難易度
システムアーキテクト試験は、高度情報処理技術者試験の中でも難易度が高い試験として知られています。情報処理技術者試験はレベル別に分けられており、システムアーキテクト試験はレベル4に位置付けられています。レベル4は高度な専門性を求められる区分であり、合格率は例年15%前後で推移しています。試験の難易度を示す指標である資格偏差値は68とされています。
試験は、午前Ⅰ、午前Ⅱ、午後Ⅰ、午後Ⅱの4つの区分に分かれており、いずれも合格基準を満たす必要があります。特に、午後Ⅱ試験は論述式で、受験者の経験に基づいた解答が求められるため、難易度が高いと言われています。論述式試験では、設問で要求した項目の充足度、論述の具体性、内容の妥当性、論理の一貫性、見識に基づく主張、洞察力・行動力、独創性・先見性、表現力・文章作成能力などが評価の視点となります。
システムアーキテクト試験の受験者数は減少傾向にありますが、これはIT業界の動向や他の資格試験の人気が影響していると考えられます。
合格者の平均年齢は36歳前後であり、多くの受験者が実務経験を積んだ上で試験に挑戦していることがわかります。
難易度が高い試験であるからこそ、合格することで得られるメリットは大きく、自身のスキルアップやキャリアアップに繋がるだけでなく、周囲からの評価も高まります。
システムアーキテクト試験の内容
システムアーキテクト試験は、午前と午後に分けて実施されます。午前試験は多肢選択式で、情報技術に関する基礎知識や応用能力を問います。午後試験は記述式と論述式で、より実践的な能力を評価します。
午前Ⅰ試験
試験時間:50分
問題数:30問
出題形式:多肢選択式 (四肢択一)
出題範囲:情報処理技術者試験制度におけるスキルレベル3(応用情報技術者試験の午前試験とほぼ同程度)に相当する、テクノロジ系、マネジメント系、ストラテジ系の3分野
合格基準:100点満点中60点以上
午前Ⅰ試験では、応用情報技術者試験の午前試験と同様の範囲から出題されます。出題内容は本試験の同日に実施される応用情報技術者試験の午前試験問題からの抜粋となるため、既に応用情報技術者に合格されている方や同等レベルの方は対策として過去問題を解くのがおすすめです。また、午前Ⅰ試験には免除制度があります。
午前Ⅱ試験
試験時間:40分
問題数:25問
出題形式:多肢選択式 (四肢択一)
出題範囲:セキュリティ、システム開発技術、システム企画
合格基準:100点満点中60点以上
午後Ⅰ試験
試験時間:90分
問題数:4問中2問を選択
出題形式:記述式
出題範囲:中規模システムの設計・開発に関する問題
合格基準:100点満点中60点以上
午後Ⅱ試験
試験時間:120分
問題数:3問中1問を選択
出題形式:論述式
出題範囲:大規模システムの設計・開発に関する問題
合格基準:A~Dの4段階評価で、A評価のみ合格
システムアーキテクト試験の受験資格
システムアーキテクト試験には受験資格は設けられていません。年齢、学歴、職歴などは一切問われません。そのため、IT未経験者でも受験することは可能です。
ただし、試験内容は高度なため、実務経験者や情報処理技術者試験の他の区分に合格している方が有利と言えます。
システムアーキテクト試験の受験料
システムアーキテクト試験の受験料は7,500円(税込)です。
システムアーキテクト試験の試験日と試験会場
システムアーキテクト試験は、例年4月中旬に実施されます。試験会場は全国各地に設けられています。2024年度春期試験は4月21日(日)に実施されました。
具体的な試験日や試験会場は、情報処理推進機構のウェブサイトで確認できます。
なお、システムアーキテクト試験は日本語だけでなく、英語でも受験することが可能です。
システムアーキテクト試験対策におすすめの書籍
システムアーキテクト試験は難易度が高い試験であるため、事前の準備が不可欠です。 ここでは、試験対策におすすめの書籍をいくつか紹介します。
情報処理教科書 システムアーキテクト 2025~2026年版
午前Ⅱ、午後Ⅰ、午後Ⅱの対策を1冊で完結できる。過去問の分析に基づいており、試験によく出るテーマや問題を厳選して解説している。ITと経営の両方の視点から解説されている点も特徴。
ALL IN ONE パーフェクトマスター システムアーキテクト 2025年度版
試験範囲全体を網羅しており、基礎から応用まで段階的に学習できる。豊富な図表や例題を用いて、わかりやすく解説している。午前Ⅰ対策の長文問題の読み取り方と、午後Ⅱ対策の情報処理試験特有の論述に特化している。
システムアーキテクト 合格論文の書き方・事例集 第6版
午後Ⅱ試験の論述対策に特化した書籍。合格論文の書き方や構成、注意点などを詳しく解説しており、多数の合格論文の事例も掲載している。論文形式で解答する際に必要な、構成力、記述力、表現力を磨くことができる。
システムアーキテクト 総仕上げ問題集
直近の本試験問題を収録しており、試験本番を想定した実践的な対策ができる。詳細な解説も付いており、理解を深めるのに役立つ。解答用紙がダウンロードできるため、本番と同じ環境で問題を解く練習ができる。
システムアーキテクト 午後2 最速の論述対策 第2版
午後Ⅱ試験の論述対策に特化した書籍。短期間で合格レベルの答案を作成するためのテクニックを解説している。システム開発のウォーターフォールモデルにおける論述の書き方を解説している。
オンラインリソース
システムアーキテクト試験の対策として、オンラインリソースを活用することも有効です。IPAのウェブサイトでは、過去問やシラバス、サンプル問題などを公開しています。
また、オンライン学習サイトやフォーラムなどでは、試験に関する情報交換や質疑応答を行うことができます。
システムアーキテクト試験に関する最新情報
システムアーキテクト試験に関する最新情報としては、2024年4月(令和6年春期)試験より、午後Ⅰ試験と午後Ⅱ試験の組込み分野の出題がエンベデッドシステムスペシャリスト試験に集約されることが発表されました。
これに伴い、システムアーキテクト試験の試験要綱とシラバスが更新されています。受験者は最新の情報を確認しておく必要があります。
また、今後のシステムアーキテクト試験では、クラウドコンピューティングや人工知能など、最新のITトレンドや技術に関する出題が増加すると予想されます。常に最新の情報に目を向け、学習に取り入れることが重要です。
システムアーキテクト試験に合格するメリット
システムアーキテクト試験に合格することで、様々なメリットを得ることができます。
- IT関連のスキルや知識をアピールできる:システムアーキテクト試験は国家資格であるため、社会的な信頼度が高く、ITに関する高度な知識とスキルを証明することができます。
- 市場価値を高められる:システムアーキテクトは、IT業界において需要の高い職種です。資格を取得することで、転職やキャリアアップに有利になります。
- 転職時に有利に働く:システムアーキテクトの資格は、転職市場において高く評価されます。より良い条件で転職できる可能性が高まります。
- 他資格の一部試験が免除される:システムアーキテクト試験に合格することで、情報処理安全確保支援士試験やITコーディネーター試験など、他のIT系資格試験の一部科目の受験が免除されます。
- キャリアアップに役立つ:システムアーキテクトの資格は、昇進や昇給、プロジェクトリーダーへの抜擢など、キャリアアップに繋がる可能性があります。
結論
システムアーキテクト試験は、ITエンジニアとしてのキャリアアップを目指す上で非常に重要な資格です。
難易度が高い試験ではありますが、適切な教材を選択し、計画的に学習を進めることで、必ず合格を勝ち取ることができます。
この記事で紹介した情報が、システムアーキテクト試験合格を目指す方々のお役に立てれば幸いです。
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