プロジェクトマネージャ試験は、ITプロフェッショナルとしてのキャリアアップを目指す上で重要な資格です。情報処理推進機構(IPA)が主催するこの国家試験は、高度な知識とスキルを証明するものとして、多くのエンジニアから注目されています。
この記事では、プロジェクトマネージャ試験の概要から難易度、試験内容、そして合格のための対策まで、詳細に解説していきます。試験合格を目指し、プロジェクトマネジメントスキルを向上させたい方は、ぜひ参考にしてください。
プロジェクトマネージャ試験とは?
プロジェクトマネージャ試験とは、IPAが実施する情報処理技術者試験の一区分で、高度試験に分類されます。ITシステム開発プロジェクトにおいて、プロジェクトマネジメント業務を遂行するための知識と実践能力を評価する試験です。
IPAでは、プロジェクトマネージャ試験の対象者像を以下のように定義しています。
高度IT人材として確立した専門分野をもち、組織の戦略の実現に寄与することを目的とするシステム開発プロジェクトにおいて、プロジェクトの目的の実現に向けて責任をもってプロジェクトマネジメント業務を単独で又はチームの一員として担う者。
試験の目的
プロジェクトマネージャ試験の目的は、ITシステム開発プロジェクトを成功に導くために必要な知識・技能を有する人材を育成することです。具体的には、以下の能力を評価します。
- プロジェクトの計画・実行・管理に必要な知識・技能
- プロジェクトにおける問題解決能力
- プロジェクトチームをまとめ、目標達成に導くリーダーシップ
- 関係者とのコミュニケーション能力
試験の内容
プロジェクトマネージャ試験は、午前Ⅰ・Ⅱ、午後Ⅰ・Ⅱの4つの試験で構成されています。試験時間は合計300分です。
午前Ⅰ試験
- 時間:9:30~10:20(50分)
- 出題形式:多肢選択式 (四肢択一)
- 出題数:30問
- 解答数:30問
- 配点:100点(合格基準点は60点)
午前Ⅰ試験では、ITに関する基礎知識が問われます。基礎とはいえ、技術、経営、法務など幅広い分野から出題されるため、試験に向けてしっかり勉強しておく必要があります。
午前Ⅰ試験の免除制度
以下のいずれかの条件を満たしてから2年以内の場合は、受験申し込み時に午前Ⅰ試験の免除申請が可能です。
- 応用情報技術者試験(AP)に合格
- 情報処理技術者試験の高度試験、情報処理安全確保支援士試験のいずれかに合格
- 情報処理技術者試験の高度試験、情報処理安全確保支援士試験の午前Ⅰ試験で基準点以上の成績をとる
午前Ⅱ試験
- 時間:10:50~11:30(40分)
- 出題形式:多肢選択式 (四肢択一)
- 出題数:25問
- 解答数:25問
- 配点:100点(合格基準点は60点)
午前Ⅱ試験では、システム開発、ソフトウェア開発、セキュリティ、マネジメントなど、プロジェクトマネジメントに必要とされる専門性の高い知識が問われます。
午後Ⅰ試験
- 時間:12:30~14:00(90分)
- 出題形式:記述式
- 出題数:3問
- 解答数:2問(選択)
- 配点:100点(合格基準点は60点)
午後Ⅰ試験は記述式の試験です。プロジェクトに関する記述を読み、記述に対する設問に短文で回答する形式で出題されます。
午後Ⅱ試験
- 時間:14:30~16:30(120分)
- 出題形式:論述式
- 出題数:2問
- 解答数:1問(選択)
- 合格基準:A評価(合格水準にある)のみ ※B評価(合格水準まであと一歩である)以下はすべて不合格
午後Ⅱ試験は論述式で、プロジェクトマネジメント業務に関する専門性の高い文章を読み、経験と考えに基づいて論述することが求められます。3つの設問に対し、それぞれ600~1600文字で回答します。
試験の合格基準
午前Ⅰ・午前Ⅱ・午後Ⅰは100点満点中60点以上、午後ⅡはランクAで合格になります。
試験の難易度
プロジェクトマネージャ試験は、情報処理技術者試験の中でも難易度が高い試験として知られています。合格率は例年13~15%程度で推移しており、受験者の中でも実務経験を積んだエンジニアが多いにも関わらず、合格率が低いことから、難易度の高さがうかがえます。IPAの調査によると、プロジェクトマネージャ試験の勉強時間の平均は約200時間以上とされています。
特に、午後Ⅱの論述式試験は、120分間という試験時間の中で文章をまとめて記述しなければならず、プロジェクトマネジメントの知識に加えて、文章を書くスキルも求められるため、難易度が高いと言えるでしょう。プロジェクトマネージャ試験の合格には、午後Ⅱの小論文でAランクの評価が必要です。小論文の攻略がプロジェクトマネージャ試験の合格には欠かせないのです。
高度試験の得点分布
近年、午前Ⅰ試験の免除者は増加傾向にあり、受験者の約半数が午前Ⅱ試験からの受験となっています。しかし、午前Ⅰ試験の基準点を超えることができるのは、受験者の約45%程度です。
午前Ⅱ試験では、基準点を超えることができるのは受験者の約70%ですが、午後Ⅰ試験では約60%、午後Ⅱ試験では約50%と、試験が進むにつれて基準点を超えることができる人の割合が減っていく傾向にあります。
受験資格
プロジェクトマネージャ試験に受験資格や前提条件はありません。年齢、学歴、職歴などは一切問われません。
受験料
プロジェクトマネージャ試験の受験料は7,500円(税込)です。
受験料は、クレジットカード、Pay-easy、コンビニ払いで支払うことができます。
試験対策
プロジェクトマネージャ試験は難易度が高い試験ですが、正しい方法で勉強すれば、合格できる可能性は十分にあります。
独学でプロジェクトマネージャ試験の勉強をする際におすすめなのは、参考書と問題集を使って毎日少しずつ勉強する方法です。過去問は最低でも3、4回以上は繰り返し解くようにしましょう。
午後Ⅱ試験は、2時間で3,000文字程度の文章を書く問題が出題されるため、文章を書くことに慣れておくなどの事前の準備が非常に重要です。時間配分や筋道立てて文章を構成する対策を十分に行いましょう。
試験日
プロジェクトマネージャ試験は年に1回実施され、例年10月の第2日曜日が試験日です。
試験会場
プロジェクトマネージャ試験の試験会場は、全国47都道府県の主要都市です。
試験当日の持ち物
試験会場には9:00頃までには到着しておきましょう。試験開始は9:30です。
会場入りする前に、昼食を準備しておきましょう。
受験申請
プロジェクトマネージャ試験の受験申請手順は以下の通りです。
- 公式ウェブサイトから案内資料を確認する。
- 指定期間内にオンラインで申請する。受験者本人が必要事項を入力し、受験料7,500円を支払う。
- 申請内容の変更期間に、必要があれば申請内容を変更する。
- 受験票が発送されるので、内容を確認する。
- 試験日当日、受験票を持参して試験会場に行く。
合格発表
合格発表は12月下旬で、試験日から約2ヶ月後になります。試験開催日の20時頃にIPAのWebサイトで合格発表の日程がアナウンスされます。
合格発表当日の正午にIPAのサイト上で合格者が公開されるとともに、後に官報にも掲載されます。合格証書の発送は、合格発表日の翌月中旬頃となります。
おすすめ書籍
プロジェクトマネージャ試験の対策におすすめの書籍をいくつかご紹介します。
- 情報処理教科書 プロジェクトマネージャ(翔泳社)
試験範囲を網羅的に解説した定番書です。
- 徹底解説プロジェクトマネージャ本試験問題(アイテック)
過去問を詳しく解説しています。
- プロジェクトマネージャ合格論文の書き方事例集(アイテック)
論述式試験対策に特化した書籍です。
- うかる! 情報処理教科書 高度試験午前Ⅰ・Ⅱ(翔泳社)
午前Ⅰ・Ⅱ対策に特化した書籍です。
- ALL IN ONE パーフェクトマスター プロジェクトマネージャ(TAC出版)
ステップアップ式演習で試験対策ができます。
- プロジェクトマネージャ 合格教本(技術評論社)
試験範囲を分かりやすく解説しています。
- プロジェクトマネージャ「専門知識+午後問題」の重点対策(TAC出版)
午後Ⅰ・Ⅱ対策に特化した書籍です。
- プロジェクトマネージャ 午後2 最速の論述対策(TAC出版)
午後Ⅱ対策に特化した書籍です。
- ポケットスタディ プロジェクトマネージャ(秀和システム)
試験で問われる項目をコンパクトにまとめた携帯しやすい参考書です。
試験に合格するメリット
プロジェクトマネージャ試験は難易度の高い試験ですが、合格すれば、様々なメリットを得られます。
- キャリアアップ: プロジェクトマネージャ試験に合格することで、プロジェクトマネージャーとしてのスキルを客観的に評価することができます。
- 年収アップ: プロジェクトマネージャ試験の合格者は、転職時に高い評価を得られる可能性があります。
- 信頼性の向上: プロジェクトマネージャ試験に合格することで、プロジェクトマネジメントに関する高度な知識とスキルを有することを証明できます。
また、官公庁などの入札案件では国家資格者数が評価点になる場合もあり、そうした案件の多い企業では歓迎される資格です。
関連資格
プロジェクトマネージャ試験に関連する資格として、以下の資格があります。
- P2M資格試験: プロジェクトマネジメントの知識体系であるP2Mをベースとした試験です。
- ITストラテジスト試験: 経営とITを結びつける戦略家のための試験です。プロジェクトマネジメントよりも上流の工程である、ITビジネス戦略を含みます。
- ITコーディネータ試験: 経済産業省推進資格でもある民間資格です。プロジェクトマネージャ試験と比べて難易度は比較的低く、合格率は60%~70%程度です。CBT方式のため、合否もその場で知ることができます。
最新情報
プロジェクトマネージャ試験は、近年、アジャイル型開発を用いるプロジェクトが増加しており、プロジェクトマネージャーに求められる役割も変化していることを受けて、2022年10月に試験内容が一部改訂されました。
具体的には、アジャイル開発やプロジェクトの変化への適応に関する内容が追加されました。PMBOK第7版に対応した出題も始まっています。
今回の改訂は、PMBOK ® 第 7 版との整合性を取り、先行して改訂されたシラバス 6.0 と試験要綱(対象者像・業務と役割・期待する技術水準)の乖離をなくすために行われました。
今後も出題範囲やシラバスの内容は追加・変更が行われる可能性があるため、受験前に必ず最新情報を確認するようにしましょう。
まとめ
プロジェクトマネージャ試験は、ITスキル標準でレベル4に該当する国家資格であり、情報処理技術者試験の中でも最難関の一つです。合格率は例年13~15%程度で、難易度の高い試験と言えるでしょう。しかし、その分、取得することで得られるメリットも大きいです。ITエンジニアとしてキャリアアップを目指したい方、プロジェクトマネジメントのスキルを向上させたい方は、ぜひ挑戦してみてください。
IPAのウェブサイトでは、プロジェクトマネージャ試験に関する最新情報や過去問などが公開されています。試験対策の参考にしましょう。
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